「全国銘木展示大会・奈良大会」を見学しました。

~改めて吉野の育林文化と吉野桧の魅力を感じる~

このたび、奈良県銘木協同組合(奈良銘協)が主催する「第66回全銘展・奈良大会」を訪れました。

今回は、ここ数年最大級の規模と言われるほど貴重な機会を得て、吉野の誇り高い育林方法の奥深さに触れることができ、地域の木材産業の魅力を改めて実感しました。

吉野桧の魅力

会場には原木から造作材、構造材など、豊富なラインナップが揃い、最も印象に残ったのは、吉野桧の圧倒的な存在感です。緻密で美しい木目を持つ吉野桧は、古くから宮殿、社寺、仏閣などに多く用いられてきた銘木です。カウンター材や磨丸太、絞丸太、一つ一つがまるで作品のような風格を持ち、どれもが空間に独特の存在感を与える逸品ばかりです。

その背景には、吉野地域に根付く独自の育林文化があり、ここならではの手法が一本一本の木を「芸術品」に変えています。

吉野林業の育林文化―密植

吉野の育林は、他の地域とは異なり、「密植」や「頻繁な枝打ち」が特徴です。通常間伐や枝打ちは樹木を早く成長させる目的で行われますが、吉野林業では敢えて苗木を密に植え、その後の手入れを繰り返すことで、強度や美しさを高める独自の方法が取られています。

この方法により、多くの苗木を密集して植えるため、一本一本が日光を十分に得られず成長が抑えられつつも、まっすぐで年輪の詰まった強い材が育つのです。

吉野林業の育林文化―頻繁な枝打ち

吉野桧の木肌は、年輪の幅が細かく均一で、その緻密さと滑らかさは顕著的です。これは、苗木から数世代をかけて行われた頻繫な枝打ちと丁寧な間伐の積み重ねによって生み出されたものです。この細やかな作業は非常に手間がかかるため、木が育つ過程での見えない努力が品質に現れています。

この「手間を惜しまない」育成方法は、数世代にわたって受け継がれてきたものであり、日本の育林文化の粋とも言えるでしょう。

次世代に受け継ぐべき吉野林業

今回の見学を通じて、吉野銘木の魅力と価値を再認識することができました。吉野桧は、ただの木材ではなく、長い年月と手間をかけて育てられた日本の自然と技術の結晶です。この特別な木材が空間に与える温かみや豊かさを、これからも多くの人々に伝え、受け継いでいきたいと感じました。

吉野の山々で林業に携わる人々は、未来のために植林を行い、一本一本を大切に育てています。この持続可能な林業の精神が、吉野桧の美しさや品質の源となっているのです。

国宝建造物―法隆寺

帰りに「日本で1番目に登録された世界遺産」である法隆寺に寄りました。飛鳥時代(7世紀)に建造された世界最古の木造建築物として、1300年以上の時を超えて今なおその姿をとどめています。特に、五重塔の壮大さは圧巻で、その高さと美しい屋根のラインは遠くからでも目を引きました。

法隆寺の主要な構造材に使用されているのがヒノキで、その産地は定かではないですが、材質の似た産地で当てはまるのが吉野桧であると言われています。

吉野桧は法隆寺のような長い歴史をもつ木造建築を支える重要な素材であり、法隆寺はまた、吉野桧が持つ特別な魅力を伝える建築物でもあります。このつながりは、日本の自然、文化、技術がひとつに結びついたものであり、次世代に継承されるべき大切な遺産です。